ある犬のおはなし

『この声は、あなたに届きますか』

原作・画 kaisei

貼り絵 渡辺順子

ある犬のおはなし

Concept

2

『かわいいね、この子にする』


そう言ってあなたはぼくを


抱きしめてくれました

Concept

3

そうして ぼくは 



あなたの家族になりました

Concept

4


何も
知らないぼくに

あなたはうれしいことや
楽しいことを
いっぱいおしえてくれました

お散歩も
かけっこもボール遊びも

Concept

5

春には
たんぽぽのたくさん咲くこの道を
あなたと一緒に歩きました

夏には
雨上がりの水たまりをピチャピチャと
あなたと一緒に歩きました

Concept

6

秋には
たくさんの枯れ葉の上を
ガサガサと音をたてて
あなたと一緒に歩きました

冬には
真っ白な雪の中を
サクサクと一緒に歩きました

Concept

7

ぼくは

あなたのことが
大好きです

あなたと過ごした
すべての時間が

ぼくのたからものです

Concept

8


でも
いつからかな

あなたはいつも忙しそうで

ぼくとの時間は

だんだんへっていきました

Concept

9

ぼくは

少し

寂しくて

Concept

10


でも
あなたのじゃまは
したくないから
ぼくは待っていました

ぼくはあなたのことが
大好きだから・・・

あなたもきっと
ぼくのこと 大好きだよね?

だから
少しくらい寂しくても
平気です

Concept

11

『おいで』


あなたの声です

ぼくはうれしくて
思わず かけあしで

あなたのもとへ

走りました

Concept

12


ぼくは

あなたのとなりを歩きました

ふたりで歩く道

ぼくは全部おぼえているよ

あたながおしえてれた

たんぽぽの道

いっしょにあそんだ公園

Concept

13

とまわりして戻ってきたけど

今日はお家に入りません


なんだか

とくべつな日です

窓から見える

みなれない景色

Concept

14

ここは来たことのないとこ

あなたは知らないおじさんに

ぼくのリードを渡しました

おるすばんかな・・・

でも
あなたはいつもと少しちがいました

何も言わずにぼくの顔を見て
少し悲しそうな顔をしていました

大丈夫だよ
ぼくはいい子にまってるから

Concept

15

冷たいへや

悲しいにおいがしました

おじさんは

ぼくに優しくしてくれました

ぼくの頭をなでて

『よしよし、いい子だな』って

何度も言ってくれました

Concept

16

でも夜になると

おじさんはいなくなってしまって・・・

ぼくは冷たい床にひとりで寝ました

悲しい声がいっぱい聞こえてきて

ぼくは少し 寂しくなりました

でもすぐに

あなたがむかえに来てくれるから

だから大丈夫

Concept

17


ぼくは毎日

ここにすわって待ちました

あなたが来たら
一番に見つけられるように

入り口がよく見える

この場所にすわって

まちました

Concept

18

おじさんは
いつもぼくに話しかけてくれました

とっても優しい顔をして

いつもぼくの頭をなでて

かならず
『いい子だな、いい子だな』って

言ってくれました

だから・・・

Concept

19

ぼくは寂しくありません

Concept

20

何回か夜が来て・・・
何回か朝が来て・・・

おじさんはぼくを呼びました
いつものように

『よしよし、いい子だな』って
ぼくの頭をなでて・・・

そして
今日はぼくのことを

ぎゅっと
抱きしめてくれました

Concept

21


おじさんはぼくを連れて

べつの部屋へ行きました


そこにはおともだちが


たくさんいました

Concept

22

『そこに入りなさい』


おじさんは言いました


Concept

23

ぼくが中に入ると

扉はしめられてしまいました
冷たい金属の部屋の
異様な雰囲気に

みんなの小刻みに震える振動や
どくどくと速くく打つ鼓動が
伝わってきて

ぼくは急にこわくなりました
扉をあけようとしても
あけることができなくて・・・

それでもぼくは
必死で扉をカリカリしました

Concept

24

しばらくすると

なんだか苦しくなってきました

ぼくたちは部屋の奥に
小さな窓を見つけ

そこから外をのぞきました
まどの向こうにおじさんが見えました

ぼくは『あけてー』
ってさけびました

みんなもさけびました

でもおじさんには聞こえないみたいで

だからぼくはもっともっと
大きな声でさけびました

何度も何度も
でもおじさんは下を向いたままうごきません

Concept

25

ぼくたちは

立っていることができなくて

次々にたおれていきました

だんだん薄れていく意識の中で

おじさんの声が聞こえました。

『ごめんよ、

たすけてあげられなくて・・・ごめんよ』

Concept

26

『ごめんよ、

たすけてあげられなくて・・・ごめんよ』

Concept

27

そしてぼくは歩いていました
あなたと一緒に歩いた道
あなたがおしえてくれた たんぽぽの道

この先を曲がれば
またあなたに会える

きっとあなたもぼくに会えるのを
まっているはず

そう思うとなんだかうれしくなって

ぼくは走りだしました

Concept

28





「ただいま」







ある犬のおはなし


絵本『ある犬のおはなし』
作・絵 kaisei
 発行所 株式会社 トゥーヴァージンズ
ISBN 978-4-908406-00-3

(定価)本体価格 1,000円(税別) 絵本『ある犬のおはなし』


全国書店・amazonでも↑ご購入可能です。

本作は、kaisei さんのモノクロ
原画と原文をそのまま使用し、
その原画をもとに和紙貼り絵(カラー)で表現した紙芝居作品です

公開にあたり、作者である kaisei 様および出版社 twovirgins 様より、正式にご承諾をいただいております。
出版されている絵本の原文・原画を使わせていただけたことに、心より感謝申し上げます。
『ある犬のおはなし』が日本中に広がり、多くの方の思いがつながって、
動物の殺処分がなくなる未来へ近づくことを願っております。

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